中古を買うとどんなメリットがあるのか。ここでは価格面にクローズアップして考えてみよう。
築15年以前とそれ以降では下落幅が大きく異なる
一般的にマンションの価格は新築から15年ほどの間に大きく下落するが、その後はなだらかな下落曲線を描く。新築から築15年まで約57%ダウンするが、築15年から同30年まではほとんどダウンしない。また、一戸建ては築25年前後で建物の価格が下げ止まり、その後はほぼ横ばいとなる(相場変動を除いた理論値)。上のグラフでは築15年目で32%下がり、その後はさほど下がらない。
上のグラフを見れば分かるように、中古は新築に比べて価格が安いのが大きな魅力。築10年前後で新築時より4割程度ダウンするケースが多い。価格が安ければそれだけ住宅ローンの負担を軽くすることができる。また、予算が同じでも新築より広い家を買うことが可能だ。
築年数が浅いほど値下がりが大きいケースが一般的だ。その理由について、東京カンテイ市場調査部の中山登志朗さんは、「築後10年程度は『新しさ』という条件が年々弱まり、価格も大きく下がります。しかし古くても建物価値はゼロにはならないため、築10年前後から下落率が縮小するのです」と話す。
中古は分譲物件だけに、賃貸物件と比べて設備や仕様のグレードが一般的に高い。家賃と同程度のローン支払いなら、賃貸より広い家が買えることも多いのだ。「中古は価格が安い分、リフォームにお金をかけられるので新築と同様の住み心地を安く実現することも可能です」(中山さん)という面も。
家を選ぶときには、「購入か賃貸か」「新築か中古か」という2大テーマをクリアする必要がある。
それぞれ一長一短があり、家族のライフスタイルや好みなどを考慮しながら選びたい。
メリット | デメリット | |
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購入 |
・自分の家だから自由にリフォームできる ・住宅ローンを返し終えれば住居費が軽い ・仕様や設備のグレード感が高いことも |
・頭金など初期費用がかかる ・売却時に値下がりしていると損をする ・ローン以外に税金や管理費が下がる |
賃貸 |
・初期費用がさほどかからない ・気軽に住み替えられる ・値下がりで損するリスクがない |
・壁紙を変えることも自由にできない ・老後も家賃を払い続けなければならない ・手元に資産(不動産)が残らない |
メリット | デメリット | |
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新築 |
・設備や仕様が最新で住み心地がよい ・誰も住んだことがないので綺麗 ・近所と同時入居で仲良くなることも |
・中古と比べて価格が高い ・買ってすぐ中古になって値下がりする ・選べるエリアが限定されることも |
賃貸 |
・新築より安く、リフォームで自分仕様にも ・売られているエリアが多く選択肢が広い ・管理状態や居住者の実態を確認できる |
・リフォームしないと設備や内装が古い ・隣近所の輪ができていることも ・築年数が古いと維持管理が高くなる |
実際に中古を買うとどの程度おトクなのか。賃貸と比較しながら5年間の収支を試算してみよう。
賃貸の支出は家賃がほとんど。初期費用と更新料も加える
5年後に住み替えることを前提として、賃貸と中古で収支をシミュレーションしてみよう。まず賃貸は基本的に家賃を払うだけなので、礼金や仲介手数料などの初期費用や更新料も加えて計算する。その結果、賃料13万円として5年間の収支は845万円の支出となった。
中古は売却価格が収入に。それ以外は支出として計算
中古マンションの計算は少し複雑だ。まず5年後に売ったときの売却価格が収入になる。それ以外はすべて支出で、買った時の頭金や購入費用、5年分の住宅ローン返済額、売ったときの費用や住宅ローンの残債も計上。2000万円の物件の収支は差し引き569万円の支出だ。
こうしてみると、中古を購入するといろいろな費用がかかることが分かる。まず買うときには住宅ローンを借りるための手数料や保証料がかかり、契約時や登記時に税金なども必要だ。また入居した後は住宅ローンの返済に加え、マンションの場合は管理費や修繕積立金も月々支払うことになる。さらに購入時や売却時には仲介手数料もかかるので、単純に家賃とローンを比べればいいわけではない。
中古と賃貸を比べると、中古は頭金など買うときの初期費用が大きい。一方で住宅ローンが低金利なこともあり、月々の費用は一般的に中古の方が軽い負担だ。
そのため5年間の支出だけで比較すると、さほど大きな差にはならない場合が多い。だが、売却したときの収益を加味すると、収支では中古の方が有利になるケースが少なくない。ただし中古といってもこれは築15年以上の場合。築年が浅いと値下がりも大きいので、トータルで賃貸のほうが安く済むこともある。
多くの場合で中古の方が収支で得になる
上の表を見ると多くの場合で築15年程度の中古マンションの方が収支で得になることが分かる。賃貸の収支が中古を50万円以上上回るのは家賃9万円以下の一部だ。ただし価格の下落率やローン金利などにもよるので、あくまで目安としてほしい。
仕様の差を考えると中古が得なケースはさらに多い
分譲と賃貸とでは、物件の設備や仕様に差があるからだ。仮に中古の方が負担が重くても、住み心地のよい家に住めるのだから得という考え方も成り立つ。
中古マンションの魅力としては豊富な物件数や設備仕様のグレードが上がっていること、価格の安さなどが挙げられる。さらに今回見てきたように、住み替えを前提とした場合にもおトクな場合が多い。「今ではリフォーム費用も安価で技術が進んでおり、低コストで新築並みの住まいも実現します。エコポイントでリフォームが有利になっていることも注目でしょう」と、中山さんも指摘する。
中古マンションに目を向ければ、希望の住まいを賢く実現できるだろう。
中古マンションは価格が手ごろで住宅ローンの負担も軽く、新築に比べて価格の下がり幅が小さいケースが多い(都心部はその限りではない)
中古だと賃貸よりもグレードが高くリフォームもできる
立地や物件によるが5年後に住み替える場合は、中古の値下がり分を加味しても賃貸よりトクなケースがあることも。