最初に考えたいのは、本当に家賃並みに買えるのか、予算はいくらぐらいか、ということ。この先の将来設計も考えながら、物件の条件を検討しよう。
「家賃がもったいないから買う」と思う人が多い。それなら今払っている家賃でどんな家が買えるのか、ちょっとだけ見てみよう。ローンの支払い額は年収の25%以内が目安。新築より中古のほうが相場は安いので、同じ予算で広いエリアが検討範囲になるはず。ローン以外にも管理費・修繕積立金がかかることにも注意しよう。ちなみに購入者アンケートによると、最も多いのが東京北部・東部エリア。通勤に便利でありながら価格相場はリーズナブルなので人気があるようだ。
シングルは将来の不確定要素が多い。とはいうものの、ある程度、自分のライフプランを考えないと、購入すべき物件の条件が見えてこないはず。特に結婚に関しては選ぶ住まいの条件(エリアや広さ)が変わるだけに、できれば考えておきたい。ちなみに、アンケートによると「購入当初、結婚しない」と答えたのは全体の1割前後のみ。男性は4人に1人、女性は3人に1人が「購入後に結婚した」もしくは「予定がある」と答えている。「シングルで家を買う=もう結婚しない人」というイメージは昔のことなのだ。
結婚しづらくなる
結婚には関係ない
購入当初、ローンを組むために、定年まで働く(仕事をずっと続ける)覚悟ができていましたか?
35年ローンを組むということは、35年収入があり続ける前提。男性はともかく、女性は未だ出産等で退職する人が多いのが実情だけに、「定年まで働く覚悟をしないとローンを組めないのでは・・・」と躊躇する人は多いかもしれない。ところがアンケートによると「定年まで働く覚悟はできている」と答えたのは男女ともに3割程度。「覚悟はしていないが結局働く気がする」というのがリアルな気持ちのよう。ローンに関係なく、家賃を払うにも生活するにも働き続けなければいけない。無理のない範囲でローンを組めば、「ローンを組む」ことをプレッシャーに感じることはないのだ。なかには「キャッシュで購入しているので全く関係ない」という超堅実派も。
将来、親と一緒に住む可能性はありますか?
「子どもがいる兄家族は身動きがとりにくいので、親もいざというときには独身の私を当てにしている」(42歳・女性)というように、シングルも家を購入する際には親との関係が気になるもの。アンケートでは「呼び寄せる」「親元に戻る」「どちらも可能性がある」を含めると全体の4割が「なにかしら親との同居」を将来的に考えているのが分かる。呼び寄せる可能性が高いなら部屋数が必要だし、いずれ戻るつもりなら、購入物件は将来的に貸したり売ったりすることになるので便利な立地のほうがいい。想定しながら条件を考えよう。
実際に援助を受けている人は全体の4割。しかも援助を受けた人のうち、「援助してもらうつもりはなかったが援助してもらえた」”想定外”な人が5割以上もいたのは、心強い数字。先輩購入者の援助の切り出し方を参考に、予算アップを狙いたい。実際に購入したい物件を一緒に見てもらうと、具体的な数字のお願いがしやすいようだ。贈与が抵抗感あるなら、「親から借りる」「親と共有名義」という手もある。ただし、データでは、援助を受けなかった人は親の意見は特に聞いていない人が多いのに対し、援助を受けた人は大なり小なり親の意見を汲んでいることもお忘れなく。
シングルはなにかと浪費しがち。今浪費しているお金を見直そう。例えば3カ月だいたいの支出を記録しておき、何にどれだけ使っているかまず把握してみては?ちなみに購入後、節約しているお金のトップ3は「食費・レジャー代、服飾・美容代」。例えば毎週1回の飲み代、毎月2万円の洋服代、年に1回の海外旅行をガマンするだけで、予算はぐっと上がる。また購入後は「自炊するようになった」、「友人呼んで家飲み会が増えた」、「休日は家で過ごすことが多い」などお金を「使わない」傾向もあるようだ。
とはいうものの、「先が分からないから買えない」なら、ずっと買えない。「今の暮らしのための家。状況次第で売る」と割り切ったり、「今は自分が住むが、将来は家賃収入を得る投資物件として」と戦略的に考えるなど、シングルならではの購入術はいろいろ。 もちろん「ずっと住み続けたいからファミリー用」と決めるのもアリだ。「不安はあったけれど、購入してよかった」という、先輩購入者のリアルな意見も参考にしよう。
次に予算や初来設計から、どんな物件がいいのか条件を考えてみよう。「いつか結婚して住み続ける」と、「状況が変われば売却する」とでは選ぶ物件は大きく違うはずだ。
物件の広さはどのようなつもりで選びましたか?
「結婚するかもしれないし、しないかも。もし結婚して子どもが生まれたら・・・」と、先のことが見えないシングルにとって、最も迷うのは、「どれくらいの広さの物件を選ぶべきなのか」ということ。実際は、結婚・子ども誕生でも暮らせる「3人以上でも快適に暮らせる」部屋を選んでいる人が多いようだ(特に男性はその傾向が強い)。しかし広さを優先し、郊外のファミリータイプを選んだけれど、結局結婚しない、結婚しても「遠くて通えない」と未来のパートナーから言われてしまうかもしれないので要注意。「2人でも暮らせる1.5人用の間取り」を選ぶ、というのも手だ。
購入物件は先々、どうするつもり?
アンケートによると「ずっと住み続けるつもり」派と「いずれ貸すか売るかする」派は半々。自ずと選ぶ物件も変わり、前者は東京23区外、80m?以上が多く、後者は東京23区内、40~60m?が多い。やはり、結婚・転職・親の問題などで将来どうなるか分からない可能性が高いなら、マンションを売るか貸すかを想定した物件選びをするべき。シングルは特に資産価値を重視した住まい選びが重要だ。重要なのは「立地」。同じ予算で資産性を重視するなら、「狭くても」「古くても」都心立地や駅からの近さを優先させよう。
予算がある以上、何かしら妥協することも重要だ。シングルは家族間で意見調整しなくていい分、自分自身の価値観に合わせれば、思い切った妥協もできるのでは? 例えば、毎日忙しくて帰ってくるのが遅いなら、日当たりは我慢する、線路や幹線道路が近くて騒音は気になるけれど駅からの近さを優先など、「安さ」の理由を納得すれば、自分なりの割安物件が手に入るはずだ。
確かにローンを払い続けることも、この先どうなるか分からないことも、不安なはず。しかし購入者アンケートによると、むしろ「このまま賃貸で家賃を払い続けるほうが不安」と答える人が多かった。ローンを払い続けることも仕事のモチベーションにつなげている。それよりも自分の家を好きなようにする楽しさや、広くて快適な家で過ごす時間を満喫しているようだ。もちろん背伸びしすぎの物件を買うと大変だが、身の丈にあった物件なら大丈夫。積極的に探してみては?