住宅が地震に強いかどうかは、第一にその建物の構造で決まる。地震大国である日本では、大地震のたびに耐震基準が見直され、今では震度6~7の極めてまれに起こる大地震でも倒壊しないレベルを最低基準としている。今の基準を満たす住宅なら、大地震で家が倒壊して命が危険にさらされる心配は少ないと考えられるのだ。
■建物の地震対策には3タイプある
まず知っておきたいのは、建物の地震対策には「耐震」「制振」「免震」の3タイプの構造があることだ。耐震構造は柱や梁などの構造躯体全体で地震の揺れに耐えるタイプで、最も一般的といえる。住宅性能表示制度では住宅の耐震性能を等級1~3にランク付けしており、最も低い等級1でも今の耐震基準を満たすレベルだ。
■揺れを抑える制振・免震
制振構造や免震構造は地震のエネルギーを特殊な装置で吸収し、揺れを抑えることで、建物の倒壊はもちろん、損傷も小さくできる構造だ。耐震構造に比べて対応物件は少ないが、震災によるダメージを軽減するために採用されるケースが増えている。タワーマンションなど大規模な物件での例が多いが、一戸建てで導入する場合もある。
■建物が古い場合の耐震診断と補強
今の耐震基準が定められたのは1981年の6月。それ以前の建物は十分な耐震性能を備えていない可能性があり、大地震で倒壊する危険もある。ただ、そんな住宅でも耐震診断をして正しく補強すれば、性能を確保することは可能だ。「診断には自治体が補助金を出してくれるケースも多く、補強工事も数十万円程度から依頼できる場合があります」(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合常務理事・西生建さん)
建物が地震による被害を免れたとしても、設備が壊れたり、停電で電気が長時間ストップしたりすると、その後の生活に支障が出ることも考えられる。そこで最近では、震災後もなるべく早く通常の生活に戻したり、万が一避難することになっても困らないよう、対策に力を入れる物件が増えてきた。そうした物件を選ぶのも有効だろう。
■対策設備付き物件もある
地震で被害を受けたときに最も困るのが配管の損傷だ。水漏れやガス漏れの恐れがあると、お風呂やトイレを使うのにも支障が出かねない。そこで地震でも折れにくい、ホースのように曲がるタイプの配管設備や、取り替えやすい工夫がしてあることが望まれる。また建物がゆがんでも玄関を開閉できる耐震ドアや、吊り戸棚の食器などが飛び出さないよう耐震ラッチの付いた扉なども増えてきた。
■万が一に備えて備蓄する物件も
建物や設備が無事でも、ライフラインが止まってしまうとその間は避難が必要になることも考えられる。そうした場合に備え、食糧や水などを共用部分に備蓄するマンションや、仮設トイレやかまど兼用ベンチを用意するケースも。また停電にそなえ、自家発電機や蓄電池などを設置する物件もある。
建物の耐震性が確保され、地震対策を施した設備を備えた住宅を選んだとしても、地震の規模によっては万が一、家や家財が被害を受けることもあり得る。そんなとき、頼りになるのが地震保険だ。地震保険とはどんな保険で、保険料はどのくらいかかるのか。また、保険料が割引になるおトクな制度なども知っておこう。
■地震による火災は火災保険の対象外
家を買うときに火災保険に入る人は多いが、地震保険の加入率はまだ20%程度(グラフ参照)。ただし、地震で発生した火災は、地震保険に加入していないと保険金が支払われないので注意が必要だ。地震保険の内容は各社共通となっており、保険金額は火災保険の30~50%の範囲内で、上限は建物が5000万円、家財が1000万円。被害の状況に応じて5~100%の保険金が支払われる。
■地震保険には割引制度がある
地震保険の保険料は建物の構造と所在地により異なり、例えば東京都の木造住宅の場合は保険金額1000万円で保険料が年額3万1300円。耐震性能に応じて右の表のような割引制度がある。また、保険料はその年の所得から控除され、税金が軽くなる。控除対象額は所得税が保険料全額(最高5万円)、住民税がその半額(同2万5000円)だ。