誰もが一度は住んでみたい憧れの街にマンションを購入するのは「宝くじがあたらない限り、無理」なんて思っていない?今回はセレブな街でマンションを購入した、2組のご家族にインタビューしてみました。
【DATA】
●家族構成/夫(33歳)妻(33歳)長男(1歳)
●築年数(購入時)/築40年 専有面積/55m2
●間取り/ワンルーム 交通/山手線恵比寿駅徒歩5分
●リノベーション費用/約850万円
●設計/ブルースタジオ 物件価格/3650万円
独身時代は、渋谷、自由が丘など、誰もが住みたいと思う人気の街に住んでいた、引越し魔のSさん。結婚と同時に大田区の賃貸のテラスハウスに住んでいたものの、「いろんなオシャレなお店があって、散歩するのが楽しい街に住みたくなった」と引越しを決意。しかも「賃貸だと釘ひとつ刺せないから制約が多い」とマイホーム購入を決意した。希望エリアは、代官山、恵比寿、中目黒。
「昔一時期住んでいて、オシャレなだけでなく住みやすさを実感していたんです」
【写真】恵比寿ガーデンプレイスもある一方、個性的なお店やカフェが見つかる路地歩きも楽しい恵比寿
ただし、予算の問題はあった。希望エリアは人気が高く、新築マンションでファミリータイプなら、億ションも珍しくない地域だからだ。 「でもマイホームのために自分の好きなもの、好きなことをあきらめる生活はしたくなかった。ローンは家賃並みに抑えたいと考えていました」。となると、おのずと、中古、しかも築年数がかなり経過した物件に限定になる。しかし、その古さもSさんにとってはむしろメリットだったという。 「インテリアや雑貨が好きで、自分の好きなものがはっきりしていたから、思い切って丸々リフォームできる、古い中古のほうが、むしろ私にはよかったんです」
購入したのは築40年の中古物件。「遠慮なく全面リノベーションできるから条件ぴったり。でも共用部分は管理がよくて、ヴィンテージマンションとしても有名な物件だったんです」。室内は老朽化が激しかったがリノベーションで間取りも内装も一新。イチから自分好みの住まいにした。無垢材を使ったフローリング、白のモザイクタイルでカフェのような雰囲気のキッチン、白を基調とした内装に手持ちの雑貨や食器が映える、Sさんの”好き”が集まった住まいに。「どんなふうにしようかリノベーションのプランを考えるのは本当に楽しい作業でした」
【写真】収納を天井までの高さにしないことで、視線が抜け、空間が広くみえるよう工夫をしている
妥協したのは古さだけではない。予算がある以上、立地を優先させれば、コンパクトな住まいにならざるを得ないからだ。Sさんの場合も決して広くないが、それもSさんにとっては問題ないことだとか。「前の賃貸の住まいが70m2弱あるテラスハウスで、実は広さをもてあましていたんです。だから今の私たちにはこれくらいの広さがちょうどいい。今は歩きはじめて目の離せない息子もいますし、広さが限られる以上、家具も食器も本当に厳選して好きなものだけを買うようにしています」
【写真】前から持っていた雑貨が新居に飾られていてもしっくりくるのは、Sさんの感性に統一感があるから
購入時は夫婦二人暮らしだったが、1年前に長男が誕生。「このあたりは、意外と子育てしやすい街でした。近所に大小いろんな公園があるし、昔から住んでいる年配の方も多いので、子どもに優しく声をかけてくださいます」。もちろん子どもが大きくなれば次の住まい、とも考えている。「今度は夫の希望で海の近くの一戸建てにしようかな、と。もともと将来の住み替えを想定していたので、ココなら売るにしても貸すにしても困らないですから」。資産価値の高さも、セレブの街のメリットといえる。
【DATA】
●家族構成/夫(40歳)妻(39歳)長男(8歳)
●地区年数(購入時)/築27年 占有面積/約74m2
●間取り/2LDK 交通/南北線麻布十番駅徒歩5分
●リノベーション費用/約700万円
●コーディネート/リビタ
●設計/フーニオデザイン
●物件価格/4050万円
今のマンションは2軒目で、前の住まいも同じ麻布近辺だったというMさん。「共働き夫婦なので、妻の勤務先に近い都心暮らしにせざるを得なかったんです」。長男誕生後移り住んだ街は、六本木ヒルズや東京ミッドタウンへも行きやすい超都心立地ながら、商店街も近く下町のような雰囲気。
「すっかり気に入ってしまって……。でも、次男が誕生し、将来の子ども部屋を考えると、さすがに1LDKでは狭くなったんです」。ネックは予算。ちょうど近所に大型の新築マンションが次々とオープンしていた時期だった。「でも高い! とてもじゃないが手が届かないし、お仕着せの間取りにも抵抗があったので、中古マンションを購入してリノベーションすることになりました」
【写真】Mさん宅近くの眺め。「麻布は新しさと古さの両方の良さを持った街だと思います
最大の関門はエリア。「子どもを転校させたくないのでエリア内限定でした。予算に合う物件が出るのをネットで気長にチェックしていました」。そのなかでチェックしていた近所の物件が、やや価格を下げて売りに出されたのを見つけ、すかさず少し価格交渉をしたのが今の住まい。「もともと周辺環境のことはよく知っていたし、ずっと情報収集をし続けていたので相場観も分かっていました。だからすぐ決断できました」
【写真】ひとつの壁の色だけ変えてアクゼントに。こうしたこだわりも中古ならでは実現可能
中古というものの、「1982年以降の新耐震基準で建てられたもの」を基準にし、管理状況や大規模修繕の履歴などはきちんと確認した。「このマンションは室内の状況は決してよくは無かったものの、それはリノベーションでなんとかなる話。共用部のメンテナンス状況の良し悪しは重要でした」 もうひとつ妥協したのは「騒音」。北側の部屋から高速道路が近かったからだ。「特に妻はしぶりました。でも窓が二重サッシになっていて窓を閉めればけっこう聞こえないもの。それより予算内で、自分たちの環境を変えなくていいことを優先しました」
室内はリノベーションで一新。家族が集うLDKを広めに、つくり付けの収納が各場所に配置された、ナチュラルな空間に生まれ変わった。「といっても、実は間取りはあまり変えていないんですよ。内装の下地もできるだけ既存のものを活かしていたり、節約できる部分は節約しています。 ただし、幅広で無垢のタモ材のフローリング、同素材でそろえた建具やアイランドキッチンにはお金をかけました」。リノベーションではメリハリあるコストのかけ方も重要といえる。
【写真】パウダールームもキッチンや建具と同素材で制作
この2軒目の住まいも終の住み処とは思っていないというMさん。「下の子が大きくなれば、もっと部屋数が必要になるかもしれないし、子どもが独立して二人暮らしになれば、また重視する項目は変わってくる。その時その時の経済事情、したい暮らし、重視する条件に合わせて家は替えていけばいい。その前提として、売りやすく、貸しやすい都心立地であること、無理のない価格であることは絶対だと思います」。ただ、今の麻布の住まいは離れがたく、家は変えても環境は変えるつもりはないそう。「親も子どももこの街で友人が増えましたから。結局、人のつながりが街を離れがたい理由になるんですね」