マイホーム取得の資金計画に関して、親からの資金援助が期待できる場合、具体的な方法としては、「贈与」、「借り入れ」、「共有」の3つの方法があります。それぞれにメリットや注意点がありますので、これから親の資金援助を受けようと思っている人は、ポイントをしっかりと理解して、どの方法を選択するかを検討することが大切です。
これは、親からお金をもらってしまうことです。もらったお金は、頭金の足しにできますので、それだけ借入金額を少なくしたり、購入可能な物件価格を引き上げたりすることができます。親からの援助の分だけ物件価格を引き上げて、住宅ローンを目一杯組むような資金計画はあまりオススメできませんが、親からの援助の分だけ借入金額を少なくするのはトータルの返済額を少なくする意味でも非常にメリットが大きいといえるでしょう。
ただし、贈与された場合は、贈与税がかかってくる可能性があります。
贈与税は、基本的に年間110万円の基礎控除を上回る贈与に対して税金がかかるものです。例えば1000万円の贈与には231万円の贈与税が課税されます。
贈与額が大きくなるほど税額も多くなってしまいますが、住宅取得用の資金については優遇される特例(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例)がありますので、それを有効活用すべきです。
この特例は、2015年1月1日から2023年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与によって、マイホームの新築、取得または増改築等のための金銭を取得した場合、一定の要件を満たすときは、下表の非課税限度額までの金額が非課税になる制度です。
耐震・省エネ・バリアフリー | 1000万円 |
---|---|
上記以外 | 500万円 |
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住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
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~2015年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2016年1月1日~2020年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
2021年4月1日 | 800万円 | 300万円 |
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
2019年4月1日~2020年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
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基礎控除と合わせれば、それぞれ1100万円、510万円までの住宅取得資金の贈与が完全に非課税になるわけです。
また、この非課税制度は、相続時精算課税制度※と併用することもできますので、相続時精算課税制度の非課税枠である2500万円と合わせると、省エネ等住宅で3500万円、それ以外の住宅で3000万円まで、贈与の段階では非課税となります(相続の段階では、相続時精算課税制度の金額部分だけは相続財産に加えられ相続税が計算されます)。
なお、これらの制度を利用する際は、贈与税がかからなくても確定申告が必要になりますので、詳しい手続き等については税務署などにお問い合わせください。
※相続時精算課税制度とは:親または祖父母(60歳以上)から子どもまたは孫(18歳以上)への生前贈与について、2500万円までは贈与税が非課税になり、遺産相続時に税額を精算する制度。
親からお金を借りるメリットとしては、親子間の借り入れなら土地や建物を担保として提供する必要がない点と、借り入れの条件(借入金利や返済期間など)を比較的自由に決められる点が挙げられます。
ただし、親から借りる場合は、必ず「借用書」をつくるようにしましょう。「あるとき払いの催促なし」では、贈与とみなされてしまう可能性があるからです。きちんと借用書をつくって、「いくらを、いつまでに、どのようにして返すか」を明らかにしておくのです。そして、銀行振込などを利用して、返済している証拠を残しておくことが大切です。
さらに、借入金利も必ず設定しなければなりません。金利水準は、一般の金融機関等の住宅ローン商品を参考にしながら、そのうちの最低水準あたりで決めても問題ないと思いますが、金利をゼロにしてしまうと、贈与とみなされる可能性が出てきます。実際に借用書をつくる際には、最寄の税務署などに行って、問題のない借入条件になっているかどうかを相談してみるとよいでしょう。
これは、親と自分とで共同で住宅を購入するという方法。親が支払ったお金に応じた住宅(土地や建物)の持分割合をきちんと登記して、住宅を親子で共有するかたちになります。もちろん、住宅を共有するだけなので、必ずしも親と同居する必要はありません。
共有の大きなメリットは、きちんと資金負担に応じた持分割合を登記すれば、贈与の問題が発生しないことだといえます。親の負担額がどんなに多くても、贈与税はかかりません。
ただし、注意点としては、親も住宅の一部を取得することになるので、親にも不動産取得税がかかってきたり、毎年、持分に応じた固定資産税や都市計画税などの負担が必要になったりする点が挙げられます。また、将来、親が亡くなって相続が発生した際には、親の持分を相続するかたちになります。子どもが複数人いる場合は、その持分を巡ってもめてしまう可能性がないとはいえませんので、共有を検討する場合は、きちんと家族で話し合った上で決める必要があるでしょう。
このように、それぞれの方法にメリットとデメリットがありますので、十分な検討が必要です。親からの資金援助がまったく期待できない人に比べれば、圧倒的に有利だといえますが、受ける方法を安易に決めるのではなく、慎重かつ冷静に検討すべきでしょう。
イラスト/杉崎アチャ