住宅の購入は、きちんと貯蓄のできる家計の状態にある人が行うべきものなので、ある程度の頭金が貯まってから購入の検討を始めるべきですが、トータルの支払う金額で損得を考えた場合、購入するなら少しでも急いだほうがいいのか、できる限り頭金を多くするためにじっくりと貯めてから買ったほうがいいのか、判断に迷う人もいることでしょう。結論から言えば、今後の金利動向や物件価格の動向によって損得が変わるので一概に言えない、ということになりますが、将来の動向に応じて大雑把にまとめると、以下のようになります。
→ どうせ買うなら急いだほうがいい
→ どうせ買うなら急いだほうがいい
→ じっくりと頭金を貯めながら様子を見極めるべき
現在の経済情勢としては、多少景気はよくなりつつあるものの、金利や物件価格がどんどん上がっていくというほどではない状況です。上記の3つのケースで考えると、バブル崩壊後長く続いた<ケース3>の状態から<ケース1>の状態には移ってきた感じはありますが、<ケース2>の状態になるにはまだ時間がかかりそうな状況かと思われます。
とすると、「どうせ買うなら急いだほうがいい」となりますが、具体的な数字をもとに検証してみましょう。
例えば、現在30歳の人が、4000万円(諸費用込み)の物件の購入を考えているとします。便宜上、頭金はゼロとして、今すぐ買うためには、4000万円のローンを組む必要があるとします。ローンの金利は全期間固定で1.5%とし、60歳までに返済を終わらせる返済期間30年で計算すると、ボーナス返済なしで毎月返済額は13万8048円、総返済額は約4970万円になります。
一方、この人が、現在の住まいの家賃を支払いながら年間100万円の貯蓄が可能だったとして、3年間で300万円の頭金を貯めたとします。同じ4000万円の物件を買うと、借入金額は3700万円。金利は同じく1.5%で、60歳までに返済が終わる27年返済でローンを組むとすると、毎月返済額は13万8949円、総返済額は約4502万円になります。支払った頭金と合計すると、約4802万円です。
今すぐ買う場合 | 頭金を増やしてから買う場合 | |
---|---|---|
頭金 | 無し | 300万円 |
借入額 | 4000万円 | 3700万円 |
毎月返済額 | 13万8047円 | 13万8949円 |
総支払額(ローン総額+頭金) | 約4970万円 | 約4802万円 |
3年間頭金を貯めたほうが約168万円トクになりますが、3年間の家賃がこの金額を上回る場合は、やはり急いで買ったほうが有利になります。また、年間100万円貯蓄できるということで計算しましたが、これが年間50万円程度しか貯蓄できないとすると、3年間で頭金150万円、借入金額が3850万円となると、総返済額は約4684万円、頭金と合計すると約4834万円となり、差額は136万円ほどに縮まります。つまり、3年間の家賃が136万円を超えるなら、急いで買ったほうがいいということになります。
簡単にまとめると、現在の家賃が安く、毎年の貯蓄額を多くできる人ほど、急がずにじっくりと貯めたほうがよく、家賃が高く、毎年の貯蓄額が少ない人ほど、どうせ買うなら急いだほうがいい、ということです。
ただし、毎年の貯蓄額が少ない人は、現時点でも頭金が少ないはずですので、借り入れる住宅ローンをきちんと返していけるかどうかを冷静に判断すべきなのは、いうまでもありません。
なお、今後の経済情勢はいかようにも変化する可能性があります。<ケース3>に該当するような「金利が今後も下がっていく、物件価格がもっと下がっていく」状況がやってくるなら、やはり急がずにじっくりと待ったほうがいいということになりますので、とにかく住宅購入については、常に冷静にライフプランや家計の状況を見た上で判断していくことが重要です。
イラスト/杉崎アチャ