住宅取得をする際の頭金は、多いに越したことはありません。
頭金をたくさん準備できれば、それだけ住宅ローンを借りる金額が少なく済みますので、利息の負担が軽くなり、毎月の返済額を少なくでき、トータルで支払う金額もそれだけ少なくなるからです。
とはいえ、たくさんの頭金を準備しようとするほど、貯めていくのに長い年月がかかってしまい、いつまでたっても住宅取得に踏み切れなくなってしまう可能性もあります。近年では、【フラット35】をはじめとして大半の金融機関等の住宅ローンが、建築費または購入価額の100%まで利用できるようになってきているので、頭金が貯まる前に買ってしまう人が増える傾向にあるようです。
でもやはり、頭金なしで住宅取得をするのは将来のライフプランを考えても危険性が高いといえます。では、どのくらい頭金が準備できたら家を買っても大丈夫なのでしょうか。
昔から、住宅取得の際には、物件価格の2割から3割の頭金を準備すべきだといわれます。
これは、昔の住宅ローン商品が、物件価格の8割までしか借りられないのが一般的で、諸費用の負担も考えると、2割以上の自己資金がないと購入できないのが通常だったのです。
現在でも雑誌やインターネットを見ると、2、3割の頭金準備は大切だと書いてある記事が多くあります。頭金準備の大切さを考えると、最低でもそのくらいを準備するのは当然だといえるでしょう。
しかし、この考え方は、もともと借りられる金額をもとに計算した頭金の割合になっています。『年収だけでは、安心して買える住宅の価格は分からない!』でも触れたように、住宅ローンは借りられる金額ではなく、返せる金額で考えるべきです。つまり、頭金の額も返せる金額をもとに考えなければ、安全な資金計画を立てることはできないのです。
では、返せる金額をもとに考えた頭金とは、いくらぐらいなのでしょうか。
それは、自分の現在の家計から計算できる「返せる金額」と、「希望する物件価格(諸費用込みの金額)」との差額です。
例えば、自分の家計から返せる金額が3000万円だったとして、現在希望している諸費用込みの物件価格が4000万円だった場合、差額の1000万円を頭金として準備できないと、安全な資金計画での購入は無理だということになります。
当然ながら、希望する物件価格が高くなればなるほど、返せる金額との差が広がりますので、それだけ多くの頭金が必要になります。逆に、希望する物件価格を下げれば、それだけ少ない金額の頭金でも問題ないことになります。極端にいえば、安心して返せる金額が3000万円で、希望する物件価格が諸費用込みで3000万円以内なら、頭金なしで購入しても危険ではないといえるのです。
やはり住宅ローンは「返せる金額」で考えることがとても重要です。背伸びをしないで冷静に見積もったその金額をベースに、購入できる物件の価格帯を考え、頭金準備を考えることが大切です。
イラスト/杉崎アチャ