さて今回は、永遠のテーマともいわれる問題について考えてみたいと思います。
はたして住宅は、ローンを組んででも買ったほうがトクなのでしょうか。それとも、賃貸住宅で一生家賃を払い続けたほうがトクなのでしょうか。
実はこれ、そう簡単に結論を出すことができない非常に難しい問題なのです。
一生涯の金銭的な負担額だけで比べた場合、基本的に、今後の日本経済が右肩上がりに成長し、モノの値段が上昇していく、いわゆるインフレ傾向の状態が続くなら、土地や住宅の値段だけでなく、家賃も上昇していくため、賃貸住宅に住み続けるよりは、早く住宅を買ってしまったほうがトクになる確率が高いでしょう。
一方、今後の日本経済が右肩上がりにはならず、モノの値段が下がっていく、いわゆるデフレ傾向の状態が続くなら、土地や住宅の値段は上がらず、家賃は築年数に応じて下がっていく可能性が高いため、賃貸住宅に住み続けたほうがトクになることも十分に考えられます。
つまり、将来の日本経済がどうなるのかによって、損得が変わるのです。単に毎月の家賃がもったいないとか、これなら買ったほうがトクだなどと思い込んで、後先考えず高額な住宅ローンを組んで住宅を購入するのは、あまりオススメできません。
また、低金利のいまのうちにとか、税制優遇である住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除、住宅ローン減税)が受けられるうちに、などといったセールストークもよく耳にしますが、低金利の状態が続いたり、税制上の優遇が続いたりしているということは、それだけ日本経済が停滞している証拠です。もしかしたら、今はまだ賃貸のほうがトクかもしれない状態なのです。もちろん、逆バリの発想でいけば、今が住宅購入の絶好のチャンスとも考えられるわけですが。
しかし、20年後、30年後の日本経済がどうなっているのかは、誰にも分かりません。すなわち、賃貸がトクか購入がトクかは、誰も正確に予測することはできないのです。金銭的にトクかソンかというモノサシだけで住宅購入の是非を論じるのは良くないでしょうが、一般的に、一生に一度の大きな買い物といわれるだけに、最大級の冷静さが求められるのです。
イラスト/杉崎アチャ