新築と中古 10の違い

14年12月03日
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マンションの購入を検討する際、予算の都合から新築と中古の両方を視野に入れる人も多いはず。でも、新築と中古の違いは、「新しいけど高い」「古いけど安い」だけではない。見学方法や購入前にチェックできる点、保証など、さまざまな相違点があるのだ。そこで今回は、新築と中古の違いを10のテーマにまとめてご紹介。それぞれのメリット・デメリットを理解して、自分の希望に合う住まい選びを実現させよう!
物件価格
新築中古の価格差はエリアによって異なる
下のマップでは、新築と築10年の中古の平均価格を示した。いずれも中古のほうが安いが、都市部の人気立地ほど新築と中古の価格差が縮まり、郊外ほど中古の割安感が出てくる傾向にある。特に郊外では新築より割安な中古が魅力的に映るが、そのぶん、将来住み替えたくなって売りに出す際には、売却金額を低くせざるを得ない可能性もある。こうした点も視野に入れながら検討しよう。
同エリアの新築と中古で価格を比較
※ 価格データは東京カンテイ調べ。集計期間は2011年8月~2014年7月で、中古は築10年の物件が対象。いずれも専有面積70㎡換算の平均値。なお、タワーは最高階数20階以上、低層は最高階数5階以下
新築中古は購入時の諸費用も違う
マンション購入時には、新築・中古を問わず、物件価格以外にもお金がかかる。主な内訳は下表を参照。それぞれ、独自にかかる項目があるので違いを押さえておこう。
新築>と中古は購入時の諸費用も違う
試算条件
新築
  • 物件価格:3500万円
  • 専有面積:70m2
  • ローン:フラット35
  • 返済期間:35年
  • 借入額:3000万円
中古
  • 物件価格:2500万円
  • 専有面積:70m2
  • 築年:2004年
  • ローン:フラット35
  • 返済期間:35年
  • 借入額:2000万円
  • 試算/大森広司
物件情報の集め方
希望条件の明確さで選択が分かれてくる
購入の検討を始める際、まず感じる大きな違いは、情報の集め方と見学できる内容。情報を集めやすく、モデルルーム見学が中心の新築に対して、希望条件をある程度具体的にした上で見合う物件を探し、実際に見て確認するのが中古。現状ではまだ希望が曖昧で、候補を比べながら条件を固めていきたいという人は新築、すでに希望が固まっている人は中古のほうが探しやすい傾向にある。
情報誌やインターネット中心
売主の不動産会社から多くの情報が提供されるので、情報誌やインターネットを活用して情報を集める
  • ・情報量が豊富で集めやすい
  • ・多くの場合抽選があるので、中古
  •   よりは時間をかけて検討できる
  • ・求める条件に合う物件が、希望
  •   エリア内にあるとは限らない
不動産仲介会社にも依頼
情報誌やインターネットを活用するほか、予算や立地などの希望条件を仲介会社に伝えて紹介してもらう
  • ・新築より希望エリア内の物件数が
  •   豊富
  • ・仲介会社にも情報集めを手伝って
  •   もらえる
  • ・どの物件もオンリーワンなので、
  •   他の買い手がつくと探し直すことに
モデルルームで見学
建物が完成前だと「販売センター」「マンションギャラリー」などと呼ばれるモデルルームで見学する
  • ・構造や工法が展示されているので、
  •   耐震性なども確認できる
  • ・展示されているモデル住戸と購入
  •   希望住戸の間取りは異なることが
  •   多いので、別途資料などで確認が
  •   必要
実物を見学
仲介会社に段取ってもらい、実際に売りに出ている物件を見学する。現オーナーが入居中の場合もある
  • ・実物なので、日当たりや眺望など
  •   を確実にチェックできる
  • ・構造などは新築分譲当時の資料で
  •   確認するしかないが、残っている
  •   とは限らない
物件の見つけ方
候補として考えるエリアの広さが違う
物件が広い範囲に分布している新築は、通勤先などを中心に範囲を広くとらえて探す。一方、自分の希望する駅や沿線で候補を見つけやすい中古は、狭い範囲内で候補を探せる可能性が高い。
新築は範囲を広くとらえよう
住戸内の仕様や設備は一定レベル以上なので、比較しやすい。通勤先など、起点となる地点までの所要時間や予算、物件全体の規模や仕様・設備などを比べながら、取捨選択していくことになる
中古は希望の駅や沿線で考える
希望の駅や沿線など、エリアを限定して探しやすい一方、築年数や設備の性能などがそれぞれ異なる。前オーナーの住み方でも程度が変わってくるので、一件ずつ丁寧に比較検討して絞り込む必要がある
構造・耐震性
新築中古を問わず個別に確認すべき
建物の耐震強度については、1981年に基準が強化され、より高いレベルの耐震性が義務付けられるようになった。築30年以上の中古なら、新旧どちらの耐震基準に基づいているか確認したい。ただし、新しい耐震基準をクリアしている物件でも、免震構造や制振構造など、地震対策にはバリエーションがあるし、性能にも違いがある。建物の構造は、新築・中古を問わず個別に確認しよう。
新築は自分でも確認できる
建物の構造や耐震性は、多くの人が気にかける部分。このため、写真のようにモデルルームで分かりやすく展示・解説している物件が多い。もし分からない点があっても、モデルルームにいる営業担当に質問すれば説明してもらえる。また、なかには工事途中で現場見学の機会を設け、柱や壁などの建築過程を見せてくれる物件もあるため、安心感を得やすい。
中古は現状や履歴の確認が基本
現場では、柱や壁を中心に、ヒビの有無や量、しっかり補修してあるかどうかを外側から目視で確認。古くても、管理組合が耐震診断や耐震補強を実施しているような物件なら、一定以上の信頼を置ける。修繕履歴などを仲介会社に確かめよう。なお、住戸内の専有部分は、現状確認のためにもホームインスペクション(住宅診断)を依頼して専門家の助言も聞いてみてもいい。
保証・制度・消費税
内容確認を要する項目の数が違う
下表のとおり、新築より中古のほうが細かく内容を確認する必要があるが、特に注意したいのが保証制度だ。「法律で10年保証が義務付けられている新築に対し、中古は義務付けられていないので、当社では独自に『あんしん保証制度』を設けています。保証を付ける仲介会社は増加傾向ですが、その範囲や内容は会社によって異なるので、しっかり確認してください」(東急リバブル・小林さん)
建物の構造部は
10年保証される
構造部の10年保証が売主に義務付けられているほか、設備類などもメーカー保証を適用しているため、基本的に個別に確認する必要はない
仲介会社によって
保証内容が違う
購入後に問題があった場合、売主が責任を負うのか、仲介会社の保証サービスでフォローされるのかを確認。物件によって異なるので個別にチェックを
物件にかかる条件が
中古よりシンプル
「ローンの返済期間が10年以上であること」「登記簿に記載されている購入物件の床面積が50㎡以上あること」といった条件があるので要確認
新築の条件に加え
中古ならではの条件も
新築に課せられる条件に加えて、「取得の時点で築25年以内、または一定の耐震基準をクリアしていること」など、中古だけにかかる条件も
建物にかかるため
中古より額が大きい
広告などの物件価格は税込み表示になっているが、建物価格に課税されているため、価格に占める消費税の額は中古より高いことになる
仲介手数料だけなので
新築より額が小さい
売主が個人の場合、物件価格は消費税の課税対象外。仲介会社に支払う仲介手数料には消費税がかかるが、新築よりかなり安く済む
間取り変更の自由度
可変性が高い物件は新しいほうが探しやすい
家族構成やライフスタイルの変化などに応じて間取りを変えたくなった場合、右で紹介するような二重床・二重天井やスケルトンインフィルになっていると、変更時の自由度が高まる。こうした仕様や工法が増えはじめたのは、2000年ころから。基本的には、新築や築年数が浅めの中古に多い。なお、入居時点から間取りを変更したいという場合でも、新築・中古それぞれに下のような手段がある。
二重床・二重天井
二重床・二重天井
上下階の境に使われるコンクリート材と仕上げ材の間に、上の図のピンク部のような空間を設けてある仕様。配管や配線の自由度が高まるため、間取り変更の自由度も高まる
スケルトンインフィル(SI)
スケルトンインフィル(SI)
柱や壁といった構造部分と内装・設備配管などの住戸内部分を分けた工法。上下階を縦に貫く給排水用のパイプスペースが住戸外に設置されるため、間取り変更しやすい
選択肢が豊富な上に
メニュープランも選べる
新築の場合は、同じマンション内にさまざまな間取りプランの住戸があるので、購入当初から選択肢が豊富にあるといえる。さらに、未完成の新築物件であれば、「メニュープラン」が用意されていることもある。下の例のように、同一住戸でも複数の間取りバリエーションを選択できる。
メニュープランは
期限がある
メニュープランが用意されているマンションでも、工事の関係で対応できる期間が限られている。うっかり機会を逃さないように、モデルルームに行った際などは、いつまでに申し込めばいいのか確認を
リノベーションなら
こだわりを追求できる
中古では、購入と同時にリノベーションやリフォームを施す手も。「独自のこだわりを実現しやすいのが魅力です。物件によって施工可能な内容や条件が異なるので、どんな空間デザインにしたいのかをイメージしながら物件を探すといいでしょう」(リノベーション住宅推進協議会・五ノ井さん)
実際に施工できるかどうか
ハード面・ソフト面で確認
実施可能な工事内容などは物件によって違うので、施工会社とよく相談を。「遮音性能確保のため床材変更には管理組合の許可が必要」という物件もあるので、使用細則などのルールも要確認
管理規約・使用細則
ルールの改変に関与しやすいのが新築
マンションのルールには管理組合全体の基本ルールを定めた「管理規約」と、日々の生活にかかわるルールを細かく定めた「使用細則」がある。「どちらも竣工した時点からルールのひな型がありますが、実生活に即して改変していくのが普通です」(大和ライフネクスト・久保さん)。当初からの入居者としてルール変更に関与しやすいのが新築、ある程度ルールの定まった状態で途中参加するのが中古といえる。
最新のノウハウが凝縮
改善に参加しやすい
管理規約や使用細則には、入居時から一定のひな型が用意されている。「最新の指針やこれまで蓄積してきた知見がひな型に反映されている点が、新築のメリットです。管理規約も使用細則も、入居後に内容を精査していくことになりますが、この作業に自ら参加しやすい点も新築の利点ですね」(大和ライフネクスト・久保さん)
現状のルールの内容や
改訂履歴を確認したい
管理組合の意識が高く、こまめにルールを改訂して完成度が高まっていれば、中古の強みになる。「逆に管理組合の意識が低いと、途中参加した身では問題点を指摘・改善しにくいというデメリットにもつながります。購入前に、現状の管理規約や使用細則、過去の改訂履歴を確認してください」(大和ライフネクスト・久保さん)
マンション内の
店舗などの運営方法
マンション内のコンビニなどは、赤字が出ると管理費から補填される決まりになっていることもある。駐車場や1階部分の店舗スペースを賃貸に出す場合なども含め、赤字が発覚してからでは解決に時間がかかる恐れもあるので要チェック
ペットに関する
取り決め
ペット可であっても、大きさや頭数などが制限されている場合もある。また「バルコニーに出してはいけない」「マンション内では抱きかかえて移動する」といった細かなルールが設定されたケースもあるので、自身に適しているか確認
リフォームなどの
工事に関する取り決め
前ページでも触れたが、音や振動などによる他の入居者への迷惑を考慮して、リフォームやリノベーションの工事が制限されているケースも少なくない。将来、手を入れる可能性を視野に入れて買うなら、こんな点もチェックしたい
入居後の管理とコミュニティ
新築は白紙からスタート中古は実情を確認できる
新築の管理やコミュニティは白紙状態なので、どうなるのかは良くも悪くも未知。一方、すでに入居者がいる中古は、実情を確認できるのが強み。「東日本大震災を機に、近年はマンション内のコミュニティが重視されるようになっています。新築・中古を問わず、今後のマンションの価値は、コミュニティの充実度が左右するようになっていく可能性も高いのです」(三井不動産レジデンシャル・川路さん)
全員が同時入居なので
一体感が醸成されやすい
新築の場合は、誰もがほぼ同時期に入居することになる。「全員が同じ条件下でスタートを切りますから、気後れすることなくコミュニティ形成に参加できます。そして、入居者間のコミュニケーションが活発だと、物件の管理のレベルも高くなるもの。物件の価値を高く維持する上でもメリットです」(三井不動産レジデンシャル・川路さん)
転校生気分を味わうが
購入前に確認できる
購入検討段階で管理の現況をある程度確認できるのが強み。ただし、コミュニティについては、途中参加の形になるため、ちょっとした転校生気分を味わうことになる。「管理組合の理事会で新たな入居者を紹介してくれるようなマンションもあります。不安なら、仲介会社に聞いてみるのも手です」(大和ライフネクスト・久保さん)
設備
築10年以内の中古なら新築と大きな違いはない
設備類は年々進化しているが「ここ10年くらいは細かな使い勝手や省エネ性が向上している程度なので、新築と築浅の中古に大幅な違いはありません」(三井不動産レジデンシャル・川路さん)。ただ、築20年まで範囲を広げると、右表のようにバラつきが出てくる。なお、中古の場合は注意点もある。「設備類の寿命はおおむね10年です。築年数によっては、修理・交換費用をある程度用意しておくといいですよ」(東急リバブル・小林さん)
築20年以内の中古物件の設備・仕様の採用率
最近の新築ではこんな設備もポピュラーになってきている
共用設備・サービス
特に防災・防犯面での充実化が進んでいる
東日本大震災や防犯意識の高まりを受け、マンションの共用施設・共用設備は、防災・防犯対策が進んでいる。その多くは、必要なスペースやコストの関係上、既存のマンションに後から追加するのは難しいものが多い。また、暮らしのなかでコスト節約につながるような仕組み・サービスも出てきている。いずれも新築・中古で一概に区別できないが、新しいほど充実する傾向にあるといえる。
築20年以内の中古物件の共用施設などの採用率
最近の新築は防災対策や省コストにつながる取り組みが充実
構成・取材・文/竹内太郎 イラスト/中村純司 間取図・図版/長岡伸行

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